NPOおおさか緑と樹木の診断協会では、NHK文化センター梅田教室から受託し、「樹木医とめぐる巨樹・巨木」という現地講座を毎月開催しています。
3年目となる今年度最初の講座は日本樹木医会兵庫県支部の河合樹木医、中井樹木医の協力を得て、兵庫県神戸市内の樹木をめぐりました。
通常は第2金曜日の開催を基本としていますが、4月は日本人の愛するサクラの季節ということで、開花状況を考慮して第1金曜日の4月5日に開催しました。
最初の目的地は王子動物園です。王子動物園には約480本のソメイヨシノがあり、その内6割が樹齢50年を超える古木です。
今年のサクラの開花は例年より早かったため開花状況が心配でしたが、ソメイヨシノは満開、4月4日~6日の夜桜ライトアップの中日、春休み最後の平日ということもあり、園内は多くの家族連れなどで賑わっていました。
「サクラ切るバカ」と言いますが、河合樹木医は王子動物園のソメイヨシノに関する相談を受け、リンゴの剪定技術を活用し、樹齢120年を超えるソメイヨシノを毎年見事に開花させ100万人を超える観光客を集める青森県の弘前公園の管理技術を研究するため、現地に4回赴き、当地の樹勢回復に取り組んでいます。
写真①王子動物園の正面で、私たちを迎えてくれたのは笹部桜です。素人目にはソメイヨシノと区別がつきませんが、良く見ると花弁が14枚程度であでやかな感じがします。
写真②主幹切り替え剪定によって、太くて古い大枝を思い切って剪定し、新しい枝を吹かせて更新していきます。
写真③不定根誘導によって大地に根を下ろし、樹木の活力が向上しています。同時にアスファルト舗装の下にはエアーインジェクションによる土壌改良も実施しています。
写真④樹齢60年を超えるソメイヨシノの古木を移植しています。リスクのある植え替えよりも土壌改良をしっかりして若い苗木を植えるという考えもありますが、これまで培われてきた歴史と風格を重んじて移植しています。ゴリラの飼育舎の建設に伴い移植されたサクラは、傾きも方角もそのままに平行移動されています。新旧切り替え剪定により、若々しい枝が太陽を求めて延びているのが印象的です。
写真⑤神戸海洋気象台が植物季節観測用標本に指定しているソメイヨシノです。この木の花が6個咲いたら神戸のソメイヨシノの開花宣言です。
写真⑥人気者のパンダはなかなかこっちに来てくれませんでした。
写真⑦体高3.5メートルのぞうさんです。おやつの草をむしゃむしゃ、青竹を踏んでバリバリむしゃむしゃ。動物園は楽しいところです。大阪市の天王寺動物園は市外の子どもからは料金を徴収すると夢の無いことを言ってますが、神戸市では中学生までは入場無料です。
写真⑧続いて、王子動物園から東へおよそ30分、春日神社境内にある兵庫県指定天然記念物「神前の大クス」を見に行きました。
写真⑨昭和10年には家具材として売却されましたが、村民有志により神木保存会によって買い戻され、一部は伐採されずに保存されました。
写真⑩平成7年の阪神淡路大震災では大枝の一部が折損落下しました。
写真⑪市街化の進展により、クスノキの生育空間は狭まり、文字通り「困」った状態となっていますが、兵庫県の樹木医の熱心な樹勢回復措置の甲斐あって生き生き生育しており、枝葉の状態は良好です。
「樹木医とめぐる巨樹・巨木」はNPOおおさかに所属する樹木医を初め、近畿の各樹木医によって大切に守られている各地の巨樹・巨木をめぐります。詳細についてはNHK文化センター梅田教室(担当:尾藤)までお問い合わせください。
http://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_591623.html