樹木や草花を観察したり、生育診断をしたメモをめくりながら、書いたものです。
 今年の夏、猛暑が続く折、近所の樹木診断を行っていて、チャドクガの毒刺にやられた、いやな事を思い出し、その発生の観察メモをまとめてみました。
 チャドクガの発生状況については、数年前からフェロモントラップ*1を用いて観察してきました。その発生は年により変化があり、また夏と秋では成虫(蛾)の体色が違う面白さがあります。今年の夏はほとんど黒褐色で、秋は黄褐色でした。秋の観察で朝調査板を覗くと発生量が多かったときは、調査板が黄金色に輝いて見えることがあり、調査の一つの楽しみとなっていました。

 発生状況は教科書で示されているタイプと異なる場合が多いことに驚かされます。
 今年はトラップ周辺のツバキ、サザンカ、チャ、に幼虫(毛虫)の発生が見られなかったにもかかわらず、昨年に比べ1化期*2(6月~8月)、2化期(10月~11月)とも蛾の発生量が多いことです。

  観察状況(補殺累計) 1化期(昨年170)(今年230)
             2化期(昨年60) (今年220) 

 この原因の1つはトラップの設置場所が変わったことが挙げられます。昨年は、山間部の公園に設置、今年は平地の住宅地に設置しました。補殺量は当初今年は少ないと考えていましたが、全く逆の結果となっています。この違いは山間部に比べ平地の住宅地ではビル風の影響や風通しが異なるためかと思われます。この風の影響で遠方から運ばれてくるとも推察できます。また蛾自身、着地場所*3を選択する能力をもっているとも考えられます。今年もっとも違う点は2化期の発生パターン*4が昨年と違うことです。昨年は1山パターンでしたが、今年は4~5山パターンになっています。これは猛暑をはじめとする気象の変化がもたらしたことと推察できます。補殺状況をみて楽しんではいられないと思います。今年の2化期の発生量と期間の長さからみて、来年の毛虫の発生が異常に多くなるのではないかと予想している藪医です。

追記(言葉、表現の説明)
*1:雄成虫をおびき寄せるため,雌成虫の性ホルモンをセットした捕獲容器です。
*2:チャドクガは年2回発生します。その1回目を1化期、2回目を2化期といいます。
*3:蛾の着地は風での移動があったとき、地上へ降りる地点をその着地点(場所)と言いあらわしたものです。他の昆虫である例を用いた表現です。
*4:発生の消長を山形で表現したもので、そのピークの数で1山、2山と言っています。

                                              T O 生