果樹のせん定でまず覚えることは「切返せん定」と「間引きせん定」です。

「切返せん定」は図1のようなせん定で、1年生の枝をその途中から切るせん定です。切返をすると、春には元気のよい新しい枝がたくさん伸びます。

「間引きせん定」は図2のようなせん定で、1年生の枝を元から間引くせん定です。

枝が間引かれため、その部分には伸びる芽がないので、全体として枝の発生が少なくなります。

樹が大きくなって困るときに不用意に切り返すと、逆に元気な枝がたくさん出て、せん定前より大きくなってしまうことがよくあります。

樹をコンパクトにしたいときは間引きせん定中心にせん定をすることがポイントとなります。

次に、果樹のせん定で大事なことは、花の着き方を覚えることです。

果樹の種類によって花の着き方が違い、それに応じたせん定が必要になります。

図3と図4はせん定後の花の着き方を模式的に表したものです。

左側がせん定の時の状態、右側がせん定後、芽が伸び、開花したときの様子です。

図3のタイプはうめ、もも、すももなどの花の着き方です。前年の枝に花が着き、果実となります。

新芽は花とは別に伸びます。冬の芽を見ると花の芽と、葉の芽が別々に着いているのがわかります。

図5はももの枝の3月ごろの様子ですが、ふっくらと膨らんでいるのが花芽、細くとがっているのが葉芽です。

ほとんどの芽に花を着けるので、せん定ではしっかりと枝を切り、花を少なくすることが必要になります。

また、少々荒っぽく切っても花は着きます。

図4のタイプはかき、くり、ぶどう、キウイフルーツなどの花の着き方です。春に芽が伸びて、その新芽の部分に花が着きます。

図4の右上は枝の先端部分の数芽から伸びた枝に花が着き、基部のほうの芽には花が着かないことを表しています。

かきやくりの場合がこれに当てはまります。

図6はかきの枝の3月ごろの様子ですが、先端付近の大きな芽は花を着けますが、基部付近の細くて小さな芽は花をつけません。

新芽が伸びたときの様子は図7を見てください。葉の付け根に蕾が着いています。

枝の先端付近の芽にしか花を着けないので、枝の途中で切ると花芽を捨てることになります。

切返のせん定は控え、なるべく間引くせん定をすることがポイントとなります。

図4の右下はどの芽でも伸びた枝に花が着くことを表しています。

ぶどうやキウイフルーツなどの花の着き方です。どの芽にも花を着けるので、ぶどうでは短梢せん定といって1芽だけ残してすべて切ってしまうせん定法もあります。

図8はぶどうの5月ごろの様子ですが、新芽が伸び、3枚目の葉の位置にまず花房を着け、4枚目、6枚目、7枚目という順に花房を着けます。

図9はいちじくの実のなり方です。いちじくはどの芽にも花を着けますが、いちじくの花は普通の花と違い、果実の中にあります。

枝の下から先端にかけて順番に熟していきます。果樹の仲間ではちょっと変わり者です。

最後に果樹のせん定で切るべき枝について図10に示しています。果樹は果実を育て収穫することが栽培管理上の目的となります。

そのため、できるだけ多くの葉に太陽の光があたるような枝配置ができるようせん定します。

図10の切るべき枝はすべて樹冠内部に日陰をつくる枝を示しています。これを確実に切ることが美味しくて大きな果実を育てる第一歩となります。
土岐 照夫