この夏の話ですが、台湾は台中市から車で1時間ほど離れたところに行きました。もう少し車で走ると「日月潭」という台湾最大の湖で風光明媚は観光地があるところです。日本からわざわざ樹木医が来たのなら、アコウの大木の主幹が折れたので見て欲しいとの依頼を受けてボランティアで行ってきました。折れたアコウの紹介はまた別の機会にさせていただくとして、今日は台湾の美人足についての紹介です。

 残念ながら美人足と言っても女性の話ではありません。地元の人がレストランでご馳走してくれ、その中に美人足という食べ物があったのです。レストランで出された美人足はベーコンを巻いて軽く火を通していました。甘みがありシャキシャキした食感がなんともいえません。ゆでたタケノコより柔らかい食感です。またあっさりとした美人足とベーコンが絶妙のバランスでした。

 

これが美人足。ほのかな香りと上品な甘味とシャキシャキした食感。巻かれたベーコンとの 相性が良く美味でした。

これが美人足。ほのかな香りと上品な甘味とシャキシャキした食感。巻かれたベーコンとの 相性が良く美味でした。

 

 この界隈では道端のお店でも美人足が売られています。お店のおじさんが親切に取れたての美人足を生で食べさせてくれました。皮を剥いてパクッと一口、ほのかな甘味が広がります。レストランで食べたものよりシャキシャキしています。生でもけっこういけます。お店のおじさんはきれいな水の所しかおいしい美人足は取れないと言っていました。
 この美人足は日本でも河川や湖の水辺に群生しているマコモでした。マコモ(Zizania latifolia)はイネ科マコモ属の多年草で背丈は大人よりも高くなります。

 

美人足の正体はマコモの新芽の根元部分。この部分は黒穂菌によって肥大している。

美人足の正体はマコモの新芽の根元部分。この部分は黒穂菌によって肥大している。

 

皮を剥くとこのような真っ白な美人足が出現。このまま生で食べられます。

皮を剥くとこのような真っ白な美人足が出現。このまま生で食べられます。

 

 調べたところ日本でもマコモダケとして食用されているようですが、私は食べたことがありませんでした。マコモに黒穂菌が寄生し新芽の根元が肥大したものをマコモダケと呼ぶそうです。その肥大した新芽の根本部分を食用にします。
 古事記や日本書紀にもマコモダケの記述があり、出雲大社の神事にも用いられているそうです。
 しかし、日本で神事に用いられるマコモが、台湾では美人足と呼ばれているとは。たしかに透き通るような白さ、適度なふくらみとスラリとした形、私には美人足の呼び名に愛着がわきます。

笠松滋久