メキシコラクウショウの全形

メキシコラクウショウの全形

 

 見出しの問いかけに「緑色なのに「赤樫」と言うが如し」と答えたいところですが、アカガシは材が赤いのでこの名が付いたのですね。
 さて本題。厳冬1月のある日、鶴見緑地の「生き生き地球館」の裏側の生態園に青々と茂った針葉樹を見つけました。近寄って見ると、葉の様子はまさしくラクウショウです。これは「メキシコ落羽松」とプレートにあります。
 鶴見緑地のメインエントランスにメタセコイアと共に並んでいるラクウショウ(別名ヌマスギ)はもうとっくに茶色の葉を散らしています。そこで表題のような問いかけになったのです。よく似た樹形と葉を持つ2種類のラクウショウですが、生理的には違うようです。それで少し調べてみました。
 ウェブサイトの「ボタニックガーデン」によれば、「ラクウショウは、スギ科 ヌマスギ属、学名はTaxodium distichumで、北アメリカの東部からメキシコ湾岸、それにミシシッピー川流域に分布。流れのある湿地帯や川岸の湿ったところに生え、高さは20メートルほどになり、地中または水中から呼吸根を出す。雌雄異株。花期は春。」と要約できます。
 別のサイトの情報では、「アメリカ大陸の東南部からメキシコに分布する落葉の高木」と説明されているものがいくつかあります。

 

冬でも青々としたメキシコラクウショウの葉

冬でも青々としたメキシコラクウショウの葉

 

 一方、メキシコラクウショウは、スギ科ヌマスギ属の常緑高木または半常緑高木で、学名は「Taxodium mucronatum」。同じ「ボタニックガーデン」の記述をまとめると、「アメリカの中南部、テキサス州南部のリオグランデ渓谷からメキシコ、グアテマラに分布。河岸や湿地などに生え、高さは15~30メートルになる。秋に落葉しないのが特徴。メキシコの国の木に指定されている」とのことです。

 どちらも同じような地域の原産? どうちがうの? 常緑と落葉の違いだけ?

 そこで、いまや古典の書物ですが、上原敬二氏の「樹木大図説」を取り出し、その説明を要約すると、「メキシコラクウショウは、半常緑喬木、雌雄同株、2年目に短枝とともに落葉するもの、3年目に落ちるものとがある。花はラクウショウと異なり秋に咲く。メキシコ南部の温帯地方、海抜1400から2300メートルに生じる。高さ50メートル。直径6メートルに達する。昔はラクウショウとともに同じ地方に生育していたものが、気候の変化から、アメリカ南部とメキシコに別れ別々の生育地を占めるようになったが、地方的変異であっても本種のほうが祖先の形態を持つとされている。世界の巨木の1つに数えられるものが確認されている。」とあります。
 これから判断すると、両種は樹形、葉の形などはきわめてよく似ているが、ラクウショウは落葉で春に花が咲く。メキシコラクウショウは常緑又は半落葉で花期は秋、という大きな違いがあります。分布も、ラクウショウはアメリカ合衆国南東部、メキシコラクウショウはメキシコなど。付け加えると、ラクウショウの大きな特徴である呼吸根(膝)が、メキシコラクウショウでは出来ないのか目立たないようです。さらに付け加えると、メキシコラクウショウは非常な大木になるということです。
 ウィキペディアによると、世界一太い木として、「メキシコはオアハカ州サンタ・マリア・デル・トゥーレに所在するメキシコラクウショウの一個体。2005年時点での計測によると幹周36.2m、直径11.6m、樹高約35m。」とあります。

 

鶴見緑地のラクウショウ(右)とメタセコイア(樹形の違いがよくわかる)

鶴見緑地のラクウショウ(右)とメタセコイア(樹形の違いがよくわかる)

 

 私は、三十数年、「公園」をやってきて、ラクウショウもメタセコイアも植えましたが、メキシコラクウショウは初対面でした。まだまだ知らない事がたくさんあるようです。勉強不足を反省しました。

                                           (大槻 憲章)