庭に野良猫が入ってきて困ったとき、その対策で猫の忌避剤を使ったことがありましたが、有効性は感じられませんでした。その後、柑橘類の皮とコーヒーの濾し殻を猫が嫌がることを聞いて、それを庭に撒いて猫を遠ざけることを試みました。
 
 柑橘類の皮は効いたように思いましたが、コーヒーの方ははっきりしませんでした。しかし、コーヒーの濾し殻を撒いた場所に雑草が少ないことに気がつきました。しばらくすると、雑草ばかりでなく植木にも影響が出てきたので使用を辞めた経過があります。この作用がアレロパシー(他感作用)であるいうことが分かり、専門書を調べるとアレロパシーは、数多くの植物でも確認されていて、その利用の研究もなされています。
 
 また植物の遷移でも調査されていて、ヨモギ属がカラムギ、ハマチャヒキを排除して、灌木形成をしている現象が知られています。
 樹木ではアカマツの下で、イヌタデ、ハキダメギクの生育が悪くなる現象が確認されています。ナギは生育が大変遅い植物ですが、その樹林で下草が生えない報告があります。奈良の春日大社の裏山のナギ樹林で、この作用が確認されています。その他、街路樹にも植栽されているタマリンドは、その樹下でテントを張ると、テントの布がぼろぼろになるという報告がありますが、この作用は葉から出る有機酸が原因で起こり、その下に生える雑草も抑えられています。

 アレロパシーは植物の病原菌の生育抑制や殺菌作用を示すことも研究されており、古くから農法で輪作、間作、混植が行われています。具体的にはコンニャク畑にエンバク、ユーガオ畑にネギの混植でコンニャクの乾腐病、ユウガオの土壌病害が抑制されることがあります。

 庭で経験したコーヒーによる雑草への作用は、コーヒーに含まれているカフェインがハリビユ、カラスムギ、イヌビユの発芽抑制に働いたアレロパシー(他感作用)でした。

 自然の働きに驚きと、面白さを知った次第です。樹木や庭の草花を扱っていると多くの不思議な現象を見ることができるので、今後も注意深く観察していこうと思っています。

                                  T O 生