ジャカルタの風景

ジャカルタの風景

 

 秋を超えて冬に入りつつある季節に海を越えて、樹木の移植のため向かった地は、インドネシア、赤道を少し南側に超えた常夏の島。予想はしていましたが、真っ赤な粘土質の大地と四季のない赤道直下の気候と年輪なく生長する樹木、根が日本では考えられないほど旺盛に伸び、しかし日本の樹木のように葉は密集したりせず、まるで透かし剪定でもしたかのような木々。
 何から何まで面白くてたまりません。木陰は大阪の夏より涼しく、町は活気にあふれ、メシもうまい。例えば現地のパダン料理は香味野菜を鼻の奥にねじ込んでくるが如く強烈な風味でありながらも塩分は控えめで、深~い味わい。自分の好みを直撃です。

 

ジャカルタの木

ジャカルタの木

 

町でも山野でも、いたるところで様々な花や果実が実り、見たこともない植物がどんどん行く手を阻みます。私がジャカルタに行ったのはちょうど乾季から雨季に変わる時で、マンゴーの季節からドリアンの季節に変わるところでした。

 

松のような

松のような

 

道にあふれる渋滞やクラクションや高速道路を歩きながら水やお菓子を売りつけるツワモノたちをかわしつつ、流しのギター奏者にマンドリン奏者に野生のニワトリに野生の屋台にも目もくれず、移植するべき熱帯の果樹の元に向かいます。

 

手斧や桑

手斧や桑

 

 一緒に計画に参加することになった、気のいい植木屋のオッチャンたち。気が遠くなるほどの暑さにもめげず、黙々と鍬で土を掘り、太い根を手斧で切っていきます
 普段移植作業で私が使うのは、ノコギリにハサミにスコップなどなど。何の疑問も無くこれが当たり前だと思っていたのですが、このインドネシアの地では違います。
まず、非常に持ち手が短いクワそしてハサミでもなく、ノコギリでもなく、手斧でほとんどすべての作業を行ってしまいます。日本ではノコギリや剪定ばさみの出番のところを手斧でエイッ!という具合です。

 

現地の作業

現地の作業

 

 インドネシアの大地はどこまでも赤い粘土質でおおわれており、だからこそ、この小さなクワで掘り進むことが出来るのでしょうが、たまには石も出て来ます。そうすると途端にクワが欠けたりします。作業中、オッチャンは石が出てくるから欠けちゃうよ~と嘆いてました。そこでオッチャン達のノコギリや斧を見せてもらうと、悲しいほどに欠けたり、刃がつぶれたりしています。

 

手斧

手斧

 

そこで現地で調達したヤスリセットを取り出し、刃を研いであげると非常に喜ばれました。現地の道具を手入れしてみて、驚きました。鉄が非常に柔らかいのです。鉄の質が雑で、焼きも入っていません・・・。
 このインドネシアの作業は赤道直下の強烈な日差しの下で、非常に過酷です。
水は水道水でさえもそのままでは飲むことはできず、日本のように水分の補給も気楽にはできない環境です。日本の職人もそうですが、人は道具を一振りするごとに、少しずつ自分の命を消費していきます。
 このジャカルタに来てハタと気づきました。良い道具とはブランドやコレクションのお飾りではなくて、その使い手の命を守り、救うものなんだなぁ。

 

街の園芸店

街の園芸店

 

ということでやってきたのはジャカルタの園芸店。
なんと日本の剪定鋏も売ってます。
他にも

 

あれに似た

あれに似た

 

こんな剪定バサミが売られてました。
この柄がピンク色だと、な~なんとなく有名なスイスのあれに似ている・・・。
で、切れアジはといいますと予想に反してよく切れます。
なんでなんだ!?と観察すると刃はそれなりにテフロン加工。しかも刃が薄いので抵抗が少ない。そしてもちろん鉄は柔く、しばらく使うと、すぐに刃がへたってしまいました。
いろいろ考えさせられます。
                                            笹部雄作

 

大きい木

大きい木