株立ちのアカマツ
昨年12月の研修で、滋賀県湖南市の美松山(びしょうざん)に自生する「平松のウツクシマツ」(1921年指定 国天然記念物)を見学し、アカマツのイメージを覆すような衝撃を受けました。ウツクシマツ(美し松)は、根元から多数の幹が枝分かれして、傘状の樹冠となることが特徴です。
一方、庭園や公園で見られる、よく似たタギョウショウ(多行松)は、ウツクシマツよりも樹高が低く、概ね5m以下で、枝の広がる角度が広いとされています。園芸種として、古くから接ぎ木で増やされたものが普及したと考えられています。新宿御苑や兼六園のものが有名です。
なお、両者の学名はいずれもPinus densiflora for.umbraculifera で、具体的な根拠に基づく明確な区分が無いとも言われ、北村四郎は、同一のものである可能性も指摘しています。因みに、葉のDNAを調べたところ、タギョウショウは3公園8個体のうち7個体が同一クローンであったのに対し、天然生のウツクシマツは全て別物で、タギョウショウとも別であったとの報告があります。
さらに、韓国にも盤松(チョウセンタギョウショウ)というアカマツがあり、根元から太い幹が何本も分かれ横に広がる特徴を持っているとのこと。ウツクシマツに近い樹形で、樹齢200~400年の、全土で6本の盤松が天然記念物に指定されているそうです。これについては、定例勉強会で何度も取り上げられ、5月末の韓国樹木研修でも視察するそうです。
池田市の3本立ちのアカマツ
「枝分かれのアカマツ・・・」と、ぶつぶつ唱えているうちに、自宅近くの五月丘の団地の敷地内で、ふっと見上げればそこに、なんと!3本立ちのアカマツが!何度数えても、1、2、3。娘の小学校の参観日に行くところでしたが、途中のPTA行事を抜け出して、カメラと巻尺を取り出しました。
樹高15m、枝張り南北12m、東西6m。地上60cmで3又に分かれ、それぞれの幹周は142cm、130cm、128cm。3又部分を上から見ると、幅30cm程の平らな部分が有ります。樹勢が良好であることは、上部の枝の伸長状態が良い事からも推察されます。残念ながら、樹冠が傘状とは言い難いのですが。
この辺りは風致地区に指定されており、アカマツの他にクロマツ、サクラ類やコナラ、クスノキ、アラカシ、シラカシ等の高木や、ベニカナメ、サザンカ、ヒラドツツジ等の中低木が多く植栽されています。ただし、今から56年前の昭和31年に、住宅都市整備公団(現独立行政法人都市再生機構)によって宅地開発事業が始まりましたが、その当時に自生していた樹木も多く残されています。このアカマツもその一つで、植栽された周囲の樹木類と共に剪定されながら、現在に至ったと推測されます。団地の老朽化に伴い、10年程前に団地の建て替え工事が行われ、敷地内の樹木や草花も再度整備されました。
皆様は、この3本立ちのアカマツをどう思われますか?
オマケですが、その1週間前に池田市の園芸店で、タギョウショウが商品として植えられているのを見ました。樹高0.7m程で、樹高以上の枝張りがありました。根元近くには、パンジーが植えられていました。思わず、下から覗き込んでしまったワタシです・・・。
(K.Ta)