ヤマグルマは、東北の山形県以西の温帯から亜熱帯に分布する、1科1属1種の常緑の高木で、急な斜面に多く生育する。
 そしてヤマグルマは被子植物でありながら、導管がなく、代わりに裸子植物と同じ仮導管を持ちつづけている貴重な植物である。
 ところで大阪府内には、ヤマグルマは生育してないと思われていたが、1983年に泉南自然同好会の里中長治氏が和泉市の槇尾山の西南部、側川谷上流の清水(きよず)の滝付近でヤマグルマを見つけ、当時、話題になった。
 私は、5年ほど前の夏にそのヤマグルマを見つけるために、清水の滝へ行ったのだが、落葉樹も葉をつけている季節でもあり見つけることが出来なかった。
 再びリベンジを思い立ち、今度は冬に行こうと思っていたが、寒いのも苦手なので暖かくなるのを待っていたら、スギ花粉の季節になり、どうしようかと思っていたら桜の開花の季節になったので、思い切って出かけることにした。
 2013年3月22日に車で側川の集落まで行き、そこから、てくてくと車道の終点まで1時間ほど歩く。
 車道は悪路と聞いていたので徒歩で行ったのだが、終点まで立派な道が出来ていて、だまされたような気分である。
 登山道は、あちこちで倒木が道をふさいでいて、開明の滝付近では木が倒れ、道が崩落により無くなっていた。

 

開明の滝と倒木

開明の滝と倒木

 

 それでも、めげずに清水の滝を目指す。急な斜面ではロープがつるされていて、ロープをつかみながらよじ登る。落ちたら谷底に転落する、結構ハードな登山道が続く。

 

登山道とロープ

登山道とロープ

 

 やっと清水の滝に到着。途中誰にも出会わなかった。もっとも道がこんなに荒れていたら登山者はいないのが当然かもしれない。久しぶりに見る清水の滝は、夏にくらべ水量が多く、冷たくて気持ちが良い。

 

清水の滝

清水の滝

 

 さて、ヤマグルマはどこかと、双眼鏡であたりをくまなく探すが見当たらない。
 あきらめて帰りかけたが、せっかくここまで来たのだからと、また引き返し、滝の周辺を歩いていると、小さな道があった。どうも大きく迂回して滝の上に続く道みたいで、崖に沿った急峻な道をよじ登ると滝の上に出た。
 そこには祠が祭ってあり、横には大きなアカガシの木が御神木みたいにそびえていた。水路の上で、すぐ下は滝なのに、こんな大きな木がよく倒れないものだと感銘した次第である。

 

清水の滝の上の祠とアカガシ

清水の滝の上の祠とアカガシ

 

 そして、ここで何気なく滝の下の方を見ていたら、崖にヤマグルマがあるではないか。急な崖なので近づくことが出来ず、計測は無理だったが、結構大きなヤマグルマだった。

 

ヤマグルマの幹

 

ヤマグルマの葉

ヤマグルマの葉

 

 まさかこんなところにあるとは思わなかったが、苦労して登った甲斐があった。
 帰りも悪戦苦闘しながらやっと車のところまでたどりついた。
 せっかく和泉市まできたのだから、帰りに「若樫のサクラ」を見るため寄り道をした。
 「若樫のサクラ」は、満開で見ごろを迎えていた。

 

若樫のサクラ

若樫のサクラ

 

 3年前に、花つきが悪くなったので診て欲しいと所有者から大阪府に相談があり、診断した経緯もあったので、少し心配していたが、綺麗に花を一面に咲かせていた。寒い時期と温かい時期のメリハリがしっかりしていたせいか、今年の桜の開花は早い。春到来である。
                         真田 俊秀