平成25年9月にNPOおおさかで日台合同樹木研修会と称して台湾ツアーを実施しました。その際に台湾で見かけた樹木について、真田俊秀さんより4回に渡り「台湾の樹木」と題して詳しく報告頂いています。それならばと、私からは台湾の土壌特性について5回にわけて報告させて頂きます。綺麗な樹木写真と異なり土壌の場合は美しい写真で飾れません。少々野暮ったい報告になりますがお許し下さい。
それでは第一回目として、台湾の首都である台北市の土壌の特性について述べます。
■もともと湿地帯だった台北の基盤
台北市は周囲を山に囲まれた盆地です。現在の台北周辺は元々おおきな湖(台北湖)であったとされています。約3000年前から1800年前の間に、その湖はじょじょに水位を下げ現在の盆地が形成されたようです。湖は干上がったもののそこは広大な湿地帯です。台北101を始め超高層ビルが乱立する辺りは、つい数十年前まで湿地帯だったようです。これらは、台北市政府庁舎内にもうけられた台北探索館に詳しく展示紹介されていますので機会があれば覗いてみてください。
このように湖から湿地帯になり、それが都市開発されたのが現在の台北市です。そのため、台北の土壌は湖底由来、湿地由来の土壌特性を示します。湖底など水中由来の土壌は長らく直接空気に触れる機会が無く還元状態にあります。土壌が還元状態におかれると土色は灰色や青みを帯びた土になります。台北市内で見かける土壌が灰色なのも湖底由来であったことを伺わせます。
■台北のネバネバ土壌
湖底由来の土壌は粘土やシルトと言ったキメの細かい土粒子によって構成されます。西日本で一般に見られる花崗岩が風化して出来たマサ土のように砂礫状の土壌ではありません。関東平野に見られる黒ボクのような火山灰起源のふかふかとした土壌でもありません。水中由来の粘土やシルトは水を多く含み、雨が降ると泥状になります。台北市内の道路工事現場をみるとコンクリートが打設されている場所を多く見かけます。日本の場合は砕石を敷き込み、その上をアスファルトで仕上げ舗装すればよいわけですが、台北では水分を多く含んだ土が泥濘化し、舗装部に不陸が発生する恐れがあるから表面を鉄筋コンクリートで覆っています。
このように細かい土粒子で構成され、水を含みやすい性質の土壌は、排水性が悪く、加湿状態に陥り、植物が根腐れを引き起こす原因になります。そのため、台北市内の植栽においては、排水対策と土壌の通気対策が重要な改良ポイントとなります。
■台北のカチカチ土壌
水を含むと泥濘化する土壌ですが、強い転圧を受け乾燥すると、次はカチカチの植物の根が入ることの出来ない土壌になります。土壌の中に砂利や礫状の建築廃材などが混入されると、水・セメント・骨材(砂利)・砂で構成されるコンクリートと同じような構造になって、よりカチカチに固まってしまいます。
昔は全ての工事は人力で行われました。しかし、現在は大型重機が現場内を走り回っています。建設現場においては大型重機によって極度に占め固められカチカチの土壌になってしまうわけです。そこに従来通りの方法で植え穴を掘り植栽してもうまく行くはずはありません。固い基盤に植栽用植え穴を掘り取ると、水は植栽枡に集中し、しかも基盤が固く透水性が悪いものですから水が溜まってしまいます。そして樹木は根腐れで枯死してしまいます。土壌固結は根の伸張を阻害するだけでなく、滞水による大きな影響をもたらします。
日本でも1960年代頃の造成現場で同じような問題が生じました。造成のあり方が変化したならば、植栽手法も状況に合わせて変わらなければなりません。これからの台北における植栽基盤整備では、排水対策を講じ、土壌を軟らかくし、透水性を改善する対策は欠かせないと言えるでしょう。
次回は台湾の土壌調査を通じてわかった植栽基盤の問題点をお伝えします。
笠松滋久