前号までに台湾のネバネバ・カチカチ土壌の実情について記しました。それでは具体的にどのような植栽基盤整備や土壌改良をすれば良いのでしょうか。以下に先日台湾で実施したクスノキの樹勢回復処置現場を紹介します。
■通気性(透水性)と排水対策
これまで述べてきたように、多くの台湾土壌はシルト・粘土分が多いベタベタとした通気・透水性の悪い土壌です。また、重機転圧や踏圧がかかるとカチカチに締め固まります。とりわけ台北近郊はもともと湖と湿地帯であった訳ですから、ベタベタの土壌で排水不良に十分な対策を要します。
以下に示す写真は(その2)で紹介した、台北市内中心部の公共施設外構植栽の樹勢回復処置を施したときの写真です。3年前に植えられた高さ12mを越えるクスノキは、年々樹勢が悪化し瀕死の状態となっています。基盤を調べたところ、70㎝深さで滞水が見られ、50cm深さまでは水が上下していた痕跡が見つかりました。12mを越える樹木が50cmの深さしか根が張れない状況です。また樹木周辺の埋め戻し土はSiCL(シルト質植壌土)ですが、指触法で土の固さを確認したところ、指で押した跡がかろうじて残るくらいの固く締まった土壌でした。そのような事から、確実な排水を確保し、土壌を軟らかくして通気透水性が改善できる手法を採用しました。
具体的には滞水が確認された70㎝深さに黒曜石パーライトを底敷きし、埋め戻し土にはパーライトとピートモスを混合した新たな客土材を入れました。養分供給として遅効性の化成肥料も少し入れています。底敷きした黒曜石パーライト層は集水枡につなげ、植栽帯の水が排水されるようにしています。また、酸素管を立ち上げ土壌通気性を向上させました。
クスノキは日本でも多い親しみのある木です。日本でも同様の樹勢回復処置は多く行われてきました。台湾は気温が高く生長量が高い環境ですから、これからどのようなスピードで回復していくのか見守りたいところです。
笠松滋久