平成26年1月31日の街路樹研修会の2日後、韓国からの客人を案内して真言宗の総本山 高野山に行ってきた。外国人の観光地案内は京都、奈良が定番、世界遺産に指定されてもまだマイナーな高野山、それも真冬の高野山へ行く外国人は少ないだろうと不安な気持ちで案内した。やはり冬の高野山は観光客もなく閑散静寂であった。杉木立の中を霧が立ち、神厳な奥ノ院、巨木林の中の聖地であった。京都、奈良の寺社とその賑わいを想像していた客人も、母国にない風景に神妙な様子。奥ノ院や苔生した墓石群の前では、敬虔なキリスト教徒でありながら暫し合掌、宗教地としてではなく日本の古い文化地に自然に掌が合わさったのでは・・・。植生が似た韓半島にも天を突く杉の巨木林はなく、その威厳さを感じたようである。
高野山の数多の院を案内しながら総本山の金剛峯寺に案内、居並ぶ伽藍を巡り境内を散策する。やはり韓国の樹木医、異国の一木一草が「木」になるようで名前を訪ねられる。そのような中、御影堂の前に端垣で囲まれた松の木が目に留まった。案内板を見ると「三鈷の松」と記されている。「空海(弘法大師)が唐の明州の浜から投げた三鈷杵が海を渡り高野山まで飛び、この松に引っ掛かり、この地を密教を広める地とした」との伝説がある。
この松、一見するとなんら変哲もない松、いや遠目では松と思えないが、よくよく観察すると針葉を持つ松、「三鈷の松」と言われ三葉と記している。手の届かない高さに枝があり葉の数を確認しずらい。足元の落葉を探すが皆目見当たらない(縁起物で全て拾られているとか)。デジカメの倍率を挙げようやく三葉を確認。
学名はPinus bungeana ZUCC 和名 シロマツ、別名 三鈷の松と言われ、中国、朝鮮、日本で産する、とある。シロマツといえば一昨年、韓国樹木研修会で訪れたソウル 憲法裁判所と曹渓寺にあるシロマツ(白松)が思い出される。樹形と幹肌が似ても似つかぬもので「三鈷の松」と「白松」が同種とは図鑑で調べて知る。恥ずかしい限りである。ソウルの「白松」は名前の通り樹肌が白く、遠目では松とは思えず、正に目からうろこが落ちた感あり。高野山の「三鈷の松」もいずれは「白松」と言われるように白い肌になるのだろうか。伝説からすると白くなっても良い樹齢なのに。因みに曹渓寺の「白松」は樹齢500年、中国から帰って来た僧が植えたものと言われている。所変われば品代わるである。
浅川充