平成26年も7月に入り、梅雨明けも間近いある日、オオヤマレンゲの花が見たくなり、山に出かけることにする。
オオヤマレンゲはモムレン科の落葉広葉樹で、6月から7月にかけて清楚な白い花を咲かせる。
韓国の国花がムクゲなのに対し、北朝鮮の国花はオオヤマレンゲになっていて、あまり国家のイメージとそぐわない感じがする。
話が横道にそれたが、近年、鹿害などでオオヤマレンゲは減少していて、各地でレッドリストの指定を受けている。
近畿では、日本百名山でもある奈良県の「八経ヶ岳」の南斜面に防護ネットで保護されて残っている。植物園などに行けば手軽にオオヤマレンゲを見ることが出来るが、自然の状態のオオヤマレンゲを見ようと思えば、近畿では八経ヶ岳(1915m)に登らなければならない。
さて、行者還トンネル西口の登山道入り口を午前8時頃出発。すぐ満開のヤマボウシの白い花が目に入る。
しばらくはヒメシャラやシャクナゲ、ゴヨウツツジが生えている急な斜面をあえぎながら登る。やっとのことで大峰縦走路に出る。少し休憩していると「こんにちは」と後ろで女の人の声が聞こえ、さっと行ってしまった。
女の人に抜かれるとは少し情けないと思い、抜き返そうと急いで出発する。
いけどもいけども姿が見えない。あれはキツネだったのかと思い始めたころ、前方にさっきの女の人が見えてきた。休憩している所を抜き返そうと後をついていくが、全然休憩しないで急斜面を登っていく。私も必死でついていく。なんとそのまま弥山(1895m)まで休憩なしで登ってしまった。
時計を見ると10時過ぎである。普通なら登山口からここまで3時間かかるところを2時間ほどできてしまった。もうヘトヘトである。弥山でしばらく休憩したあと、八経ヶ岳へと出発。
そしてお目当てのオオヤマレンゲとご対面である。そのハスの花にも似た白い花は、かすかな甘い香りを醸し出しながら、うつむき加減に咲いていた。
やはり平地でみるオオヤマレンゲよりも、冬は雪に埋もれ寒風の吹く厳しい環境のなかで育ち、短い夏の間に、凛と咲くオオヤマレンゲこそ美しいとつくづく思った次第である。
真田 俊秀