近所の古い農家にアラカシの生け垣があります。5月6日の昼下がり、アラカシの葉が葉脈を残して食害されているのに気が付きました。私の不勉強か、今までアラカシの葉が大きく食害されたのを見たことがありませんでした。へーっと思って、どんな虫が食べたのだろうと探してみましたが、残念なことに私はその時に幼虫を見つけることが出来ませんでした。そこで持っていた携帯電話で写真だけは写しておきました。しかし、それ以上追及することもなく忘れていました。
しかし、今頃になって携帯の写真を見て思い出し、何者が食べたのだろうとインターネットで探してみると、福島県で大発生した「サラサリンガ」という蛾の報告を見つけました。そこには、「サラサリンガの被害が平成 23 年より報告されるようになりました。サラリンガは幼虫がクヌギ、ナラ類カシの葉を食害する蛾仲間で、突発的に大量生すること知られています」とあります。
また、「福島県内の森林被害は、1955年に田村郡田村町(現在の郡山市田村)で発生しており、被害面積は、中害2町及び微害1町(1町は約1ha)で、本県初の被害として報告されています。しかし、この報告以降の被害事例は、確認できていません。このように福島県内では、サラサリンガの被害事例が少ないため、分布域、被害の継続年数など、森林害虫としては不明な点が多い昆虫です」とあります。
「みんなでつくる昆虫図鑑」によれば、サラサリンガ(学名:Camptoloma interioratum)は「サラサヒトリ」とも言い、コブガ科の蛾で、分布域は本州,四国,九州,対馬;朝鮮,中国となっています。また、本州四国九州における記録確認済都府県名は、佐渡島,石川,愛知,福井,富山,神奈川,千葉,岐阜となっており、発生確認地域は限られています。
成虫出現月は、6月~7月、幼虫の食餌植物はクヌギ、ナラ、カシ(※KD)となっており、終齢幼虫の体長は35㎜です。福島県における被害樹種は、 クヌギ、コナラ、ミズナラで、5月上旬から6月中旬頃まで食害被害が発生することが確認されています。インターネットの写真を見ると、幼虫は地味ですが、成虫はきれいな羽をしています。
写真を見ても、私の記憶にないので、我が家の近所(京都府南部)に普段から生息している蛾ではなさそうです。かえすがえすも幼虫を見つけ出せずに、またその後の経過観察を怠り、成虫を確認できなかったのは残念です。はたして食害したのは本当にサラサリンガだったのか、今になっては知る由もありません。どなたか、関西周辺でお気づきの方は教えてください。
大槻 憲章