昨年12月21日に「台湾樹木医学中心(センター)」の設立記念式典と記念講演会が、台北の林業試験所森林保育大楼・国際会議場で開催されました。樹木医学センターは台湾の行政院農業委員会林業試験所によって設立されました。行政院農業委員会は、日本で言うなら農林水産省に当たります。その下部組織の林業試験所は、林木から都市樹木までを対象とした試験研究機関となります。
台湾には日本の樹木医資格を取得した方が二名います。いずれも台湾の樹木治療に大活躍されており有名人となられています。そして、台湾でも樹木医認定制度を確立すべく、林業試験所や国立台湾大学などが中心となり準備を進められています。この樹木医学センターの設立もその一貫のようです。
樹木医学センター設立記念式典には、(一社)日本樹木医会の中村会長と(一社)街路樹診断協会の神庭会長と私が招待されました。中村会長と神庭会長は祝辞を述べられ、講演もされています。
【設立記念式典、記念講演会の概要】
開催日時:2012年12月21日(金) 9:30~17:30
開催場所:林業試験所森林保育大楼・国際会議場(台北市)
主 催 者:行政院農業委員会林業試験所
共 催:行政院農業委員会林務局
行政院農業委員会動植物防疫検疫所
協 賛:台湾屋上立体緑化協会
台北市景観工事業協会
【挨拶・祝辞を述べられた皆様】
行政院農業委員会林業試験所 黄裕星所長
行政院農業委員会 王政騰副主委
行政院農業委員会林務局 李桃生局長
(一社)日本樹木医会 中村澄夫会長
(一社)街路樹診断協会 神庭正則会長
国際樹芸学会(ISA)中華地区分会 歐永森会長
前台北市市長・台湾大学名誉教授 黄大洲博士
台湾林業試験所・黄所長のお話では、当面は樹木医学センターにて樹木に関する情報収集を行いながら、樹木の健康診断や正しい剪定などの啓発と普及に取り組み、そして指導者の選定と育成を実施し、4年以内に台湾樹木医の認定制度を導入する予定だそうです。
樹木医学センターには10名程のスタッフが、病害、虫害、外来種、樹木健康診断などの担当に分かれて配置されています。台湾で猛威をふるっている褐根病には専門のスタッフが付きます。褐根病は亜熱帯地域で様々な樹種に根株腐朽を感染させるシマサルノコシカケ( Phellinus noxius (Corner)G.Cunn タバコウロコタケ科)が原因で、日本では鹿児島県以南で確認され南根腐病と呼ばれています。
式典は朝9時半から始まり、講演会の最後の質疑応答が終了したのが5時半でした。丸一日かけてのイベントでしたが、その最前列で熱心にずーっと講演を聞かれていたのが、黄大洲・前台北市長です。台北市長と言えば、日本なら東京都知事に相当するような立場の人です。そのようなかたが、緑化や樹木医制度に興味を持たれていると言うのは素晴らしいことだと思うと同時に、少しうらやましい気にもなりました。
黄大洲博士は、現在、台湾大学の名誉教授に就任されています。少しお話する機会があり伺ったところ、樹木による都市環境改善に非常に興味を持たれているとのお話でした。
笠松