「韓国の樹木文化と老巨樹の探求」を第2の人生のライフワークとして取り組み始めたとき、先輩樹木医から「京都の広隆寺に安置される弥勒菩薩半跏思惟像(「宝冠弥勒」国宝 彫刻の部 第1号)は朝鮮のアカマツから彫刻されているらしいよ」と、その事を記述した貴重な資料を貸していただいた。

 

広隆寺 国宝第1号 宝冠弥勒

広隆寺 国宝第1号 宝冠弥勒

 

 その事には諸説があり、門外漢の私には想像を絶する域であるが、一説には「日本書紀に推古31年(623年)に新羅から伝来、また推古11年(603年)に聖徳太子が百済から輸入し秦河勝に与えた」と言われ、その素材が朝鮮半島のアカマツであると記されている。(異論あり)
 韓国の老巨樹を何度か探訪し、実にアカマツの老樹が多いことを知り、広隆寺の弥勒菩薩は本当に「朝鮮半島のアカマツ」かもと思いつつ、或る時、韓国の国立中央博物館に広隆寺の弥勒菩薩と瓜二つの弥勒菩薩が展示されていると聞き、ソウルの龍山区二村にある博物館を訪ねた。近代的な建物でとても素晴らしい大きな博物館である。

 

韓国の国立中央博物館

韓国の国立中央博物館

 

 3階に展示されている弥勒菩薩は木製でなく金銅製で、国宝第83号に指定された金銅半跏思惟像である。展示室の真ん中で大きなガラス室に安置され接近して鑑賞することは出来ないが、半跏思惟の右手薬指を頬にあてて物思いにふける姿はピスピスタム(似たり寄ったり)、ソウルに行ったら一見の価値あり。

 

韓国 国宝第83号 金銅弥勒菩薩像

韓国 国宝第83号 金銅弥勒菩薩像

 

 日本と韓国、木製と金銅の違いこそあれ、弥勒菩薩を崇め、慈悲し救うを乞う思いは普遍であるはず、なのに事あるごとに諍うのかな・・・?
 ところでやや前に傾いた「宝冠弥勒」、は曲がったアカマツを利用したとか、そういえば韓国には曲がったアカマツが多く見受けた。特に慶州の三陵にある松林は全部曲がっている。
真っ直ぐ伸びるばかりが良しじゃないよね、時には曲がりながら・・・

 

慶州 三陵のアカマツ林

慶州 三陵のアカマツ林

 

(日韓樹木文化・老巨樹研究協会 浅川)