これまで台湾において何箇所もの土壌調査を実施してきました。調査は都市が多く存在する台湾の西側地域を中心に行ってきました。ですから台湾東側の土壌についてはあまり詳しいとは言えませんが、調査でよく見かけた台湾の植栽基盤について報告します。

■よく育つ環境が植栽基盤整備への関心を削いでいるのでは
 台湾では、植栽計画に当たって予め土壌調査を実施するのは稀なようです。土壌や基盤の特性を把握せずに植栽するものですから、枯損率は非常に高いのが実情です。短期間に大量の樹木を植える街路樹植栽では、枯損率が30%を越えるものも少なくはありません。
 多少の手間と経費をかけても、予め調査を行い植栽基盤の問題点を掴み、問題を改善した上で植栽する方が、枯損が減り、結果トータル経費が削減できる点や、将来に健全で立派な樹木を残すには植栽基盤整備は欠かせない事を説いて回っている次第です。
 しかし、温暖で降雨の多い台湾では、ほっておいても樹木は育つと思われがちのため、なかなか調査の必要性が浸透するには時間がかかりそうです。

 

撮影 2009年      撮影 2013年

撮影 2009年      撮影 2013年

 

 上の写真は2008年に植栽されたタイワンモクゲンジです。今現在も回復を待ってそのまま放置されています。驚いたのは、私はすっかり全滅していると思っていた樹木が、4年経った現在、一部の樹木は葉を出し始めています。回復力のある樹木特性と温暖多雨な台湾の気候風土により、枯死寸前の樹木でも回復する場合があるようです。そのためか、植えれば何とかなるとの風潮が定着しているかもしれません。
 ここの場合、植栽帯が高植え状になっていることが幸いしていると思われます。日本では4年間もの間、このような状況で放置されることは考えられません。しかもこの場所は人が多く出入りする新幹線ターミナルビルの外構植栽です。

■台湾での試坑断面調査例
 次の写真は宜蘭縣の大きな公園で実施した土壌調査時に撮影したものです。宜蘭縣は先のNPOおおさか台湾ツアーで行った福山植物園や国立宜蘭大学があるところです。宜蘭は台湾の北東部に位置するところで、私が調査を行った中で唯一の台湾東側の場所です。

 

奥(下)に行くほど小さくなるシマトネリコ    下側の土壌を掘ると湧水がでる

奥(下)に行くほど小さくなるシマトネリコ    下側の土壌を掘ると湧水がでる

 

 傾斜した園路の両脇にシマトネリコが植わっていますが、園路の下に行くほど樹木が小さいのがわかります。この並木は同じ時に同じサイズのシマトネリコが植えられたのですが、下方のシマトネリコは生長がわるく、支柱も付けたままになっています。土壌断面を掘り起こすと下方の断面では40~50cm深さで水が湧いてきました。写真の奥に池が写っていますが、園路の下方ではこの池の水がしみあがってきます。

 次の図は同じく宜蘭縣にある森林公園内で実施した試坑断面調査結果です。この断面図からもわかりますが、表層20~30cmにはLoam(壌土)が造成により敷きこまれていますが、下層は通気性がわるいSilt Loam(シルト質壌土)で構成されています。そして下層は水分量が多くWet(多湿)状態であるため、樹木の根は表層にしか発達できずにいます。

 

 

 次の図はクスノキの状態が悪いと相談を受けた際、試坑断面を掘り取って確認した土壌の断面図です。場所は台北市内中心部に位置する大きな公共施設の外構植栽場所です。やはりシルト質土壌で固結しており、下層は滞水しています。

 

*表は中国語繁体字で表記されています。

*表は中国語繁体字で表記されています。

 

上記以外の場所でも、試坑断面を掘り取ると、樹勢が悪いところでは殆どのケースで滞水と固結と通気透水不良が見られます。台湾において植栽計画を実施する場合、また樹勢が悪いと相談された場合、まずは植栽基盤の排水性と土壌通気と透水性に問題が無いかを疑った上で、調査を実施し、対策を講じる必要があります。

次回は台湾の客土材の分析結果から、その特徴についてお話します。

笠松滋久