シンガポールは熱帯雨林気候帯に属しますので植物の生長は非常に早く、どのように育てるかより、早い成長に対してどのように管理していくかがポイントになるようです。常緑つる性植物のベンガルヤハズカズラは一週間に30cmも伸長すします。フェンスに這わせて緑化しているところでは二週間に一度は刈り込んでいるとの話を聞きました。 また、樹木は大きくなりすぎるので剪定管理が大変です。枝が伸びて落枝による事故で死亡事故も発生したようです。とある管理者の話ですと、2000年頃、年間3,000件もの落枝があったようですが、徹底的に危なそうな木を刈り込んだそうで二年後には落枝件数が1,000件に減ったと誇らしげに語っておられました。淡路島程度の国土で1,000件も落枝があったら大変だと思うのですが。 そう言えば、2008年にNPOおおさかと街路樹診断協会で開催した「世界の樹木管理とリスクマネジメント」のシンポジウムで来日したアメリカのトーマス・スマイリー博士が、シンガポール並木の管理コンサルタントに入っていたと言われていました。何らかの関係があったのかな? 街の中心Orchard Road近くの高級マンション「ヘリオスレジデンス」。高さ15mのワイヤーにベンガルヤハズカズラを登坂させている。 写真は丁度剪定管理が入ったばかり。1ヶ月もほって置くとうっそうとするため頻繁に剪定管理に入る。 モンキーポット(別名:レインツリー、アメリカネムノキ、)が多く植えられている。 生長が早く根本は植え込みいっぱいになっている。これだと落枝も倒木もおこるでしょうね。 壁面緑化で有名なパトリックブランの設計による室内緑化があるというので見てきました。Six Battery Roadというオフィッスビルの1階に大きな壁面緑化がありました。緑化は厚めの不織布に切込みを入れて植物が植えつけられているだけなのですが、けっこう立派なものでした。よく見ると所々に枯れが見受けられますが気にするレベルでは無いと思われます。細部に渡って見るのは樹木医達だけでしょう。 迫力のある室内の壁面緑化でした。設置してある液晶画面をタッチすると、採用されている植物の解説などが見られるようになっていました。 今回のシンガポール旅行で私がもっとも気に入ったのは、the Southern Ridges(サザンリッジ)のForest Walk(フォレストウォーク)です。シンガポール南西部の丘陵地、ケントリッジ・パークとホートパーク、テロックブランガ・ヒル・パークの3つの国立公園を結ぶ遊歩道のことをサザンリッジと呼んでいます。そのホートパークとテロックブランガ・ヒル・パーク間の遊歩道はフォレストウォーク(キャノピーウォークとも呼ばれている)となっており、ジャングルの中に延々と高い橋状の遊歩道が続いています。総延長は13㎞あると聞きました。歩道の高さは高いところで18mになり、ジャングルの中の樹木の梢が見ることができます。普通、梢端を見るのは見上げてばかりなのですが、すぐ間近に見ることができます。熱帯植物に興味ある樹木医ならフォレストウォークを制覇するには丸一日を費やすでしょうね。もっとも熱中症で先にダウンするかもしれませんが。 この橋状の遊歩道が延々と続きます。ジャングルを上から見られる樹木医にとっては貴重なスポットです。 国立公園間を結ぶ波打った独特のデザインの橋でヘンダーソンウェーブと名付けられています。上面は全面ウッドデッキになっている遊歩道です。 ホートパーク国立公園ではガーデニング・ハブとして市民に対するガーデニング情報や資材提供を行っています。ガーデニングを通して美しい街づくりに感心を持ってもらうのが目的のようです。しかしガーデニング・ハブとはすごい表現もあるものだと感心させられました。 あっという間にシンガポールの滞在時間が過ぎてしまいました。帰りはアジアのハブ空港チャンギ空港から帰国です。チャンギ空港には巨大な壁面緑化があります。また、空港内各所に庭園が作られています。シンガポールを見ると日本は緑化後進国です。 [...]