「黒柿って食べたことあります?」
黒柿とはクロガキと読み、一般には木材の名前として知られています。
柿材は淡い橙褐色ですが、稀にタンニン(柿渋成分)が沈積し黒変して、縞模様や濃淡ができることがあります。このような材を黒柿(クロガキ)と言い、昔から珍重されています。
木目は綿密で重硬、主に高級和家具や茶器・建築装飾材の材料として使用されます。
私が食べたのはもちろん木材ではありません。京菓子に「黒柿」というのがありますが、それでもありません。本来の鮮やかな柿色とは似ても似つかない「黒い柿の実」です。
先日、中国地方の山あいのある道の駅で、チョコレートのような「濃いこげ茶色」の果実が売られているのを見つけました。プラスチックのトレイに入れられ、ラップされていましたが、先の尖った涙滴型をしていて、蔕(へた)が付いています。まさしく貼ってあったラベルのとおり「柿」の形をしています。このようなこげ茶色というか黒い柿は見たことがありませんでした。
何という柿か、はたまたこの地方の特産なのか知りたくて、お店の人に訊ねてみました。すると、「今日初めて持ってきた人があったので、名前も分からないんです。売りに出すのに心配だったから、一つ剥いて食べてみました。」との返事。そして皮を剥いて切ったものを持ってきてくれました。試食させていただくと甘くて確かに柿の味がします。私は興味だけで買って帰りました。
我が家に帰って、切って見て分かりましたが、本来は渋柿のようです。種が出来て、ゴマと呼ばれる黒い点が入っています。 食べてみると甘いのですが、皮の近くなど渋い所もあります。家内は運悪く渋い部分を食べたので、「甘いところもあるよ」と勧めましたが、後は一切口にしませんでした。
食べても、何という柿か、名前が分かりません。ひょっとしたら本来はオレンジ色の柿で、渋を抜くために何らかの加工をしたので黒く変色したものではないかとも思いました。
分からない時は柿の専門家に訊ねてみるのが一番です。
岐阜県まで宅急便で送って調べてもらった結果、返事は「黒柿ですね、私も実をはじめて見ました」とのこと。やはり珍しいものだったようです。「種を植えたら黒柿が出来ますかね」と訊ねてみましたが、「接木でないとダメでしょう」ということだったので、食して記憶にとどめるだけにしましたが、地方の道の駅は珍しいものの宝庫で、探索するとワクワクします。
(大槻 憲章)